郷土史点描(5) 宮武 紳一
登別の川を訪ねて フシコベツ(古い川)
昭和十年頃、祖父が一時虎杖浜に居住していたので、祖父を訪ねて国鉄幌別駅から
阿与呂(アヨロ・虎杖浜)駅まで幾度か往復したことがある。
登別駅では、昭和八年まで稼働した電車がバスに代ったので既に見られない。
名物、わさび漬けとひょうたん飴の立ち売りの声を後に汽車が出発すると、すぐ北側は
葦原と背の高いヤチハンノキの群落がフシコベツを包む約三十~四十メートルの高台まで続いていた。
川は深い谷地原に被われて見えないが、アヨロトンネル前八十メートルがフシコベツの鉄橋で、
此処だけが柳や葦原に被われた谷地川が見えた。南海岸側も川は深く埋まり水面よりも
葦原の筋となって続いているのが見える。左手がアヨロ岸壁、右手はフンベの岸壁に挟まれた
狭い部分は、既に海岸になり砂原が切れているような部分がフシコベツ川口で海が見えた。
私の知っている昔の伏古別である。
フシコベツは、アイヌ語でフシコ・ペツ、古い川・古くからある・もとの川という意味で、
登別川のもとの川がフシコペツであると知里博士が説明している。