郷土史探訪(3) 宮武 紳一
ふるさとの伝承と石のまち「のぼりべつ」
登別に住みついた者にとって、子供の頃から忘れることのない小山の呼び名がありますが、
これが登別駅の南東に長く続いた台地状の「フンベ山」です。
ちょうど、鯨の形をした山で、昔は海側だけが崖になり、その他は、山すそもあり、現在の
ように崩れてはいませんでした。
フンベ山の語源は、プンペサパ(鯨・頭)とよばれ、「鯨の頭」の由来を示す昔話(ウエペケレ)
が、登別地方に残されています。
昔話や、なぞなぞ遊び(ウレクレク)の多くが、金成マツ、盤木ナミ、豊年ヤエなどのお年寄りによって、
語られ登別の生んだ偉大な言語学者知里真志保によって、まとめられたことは、登別市の誇りとすべきことでしょう。
動物を神とするお話は、本州の動物起源伝説と共通している点もありますが、フンベ山の話は、カワウソ
の神が海魔を退治する話です。「大昔、天に住んでいた偉い神様が、人間の住んでいる国を、ふと見ると、
国のはるか遠い東の果てに、ショキナの海魔(古く年を経た巨大な鯨のようなものといわれている)が、
上のあごは天空すれすれに、下あごは海底すれすれに、大口を開けて海の上を行き来する舟を、人もろとも
呑みこんでしまおうと構えていました。
天に住んでいた偉い神は驚いて誰か海の悪魔を退治して、人間の住む国を救ってやる勇ましい神は
いないか!」とおおぜいの神に相談したけれど、海魔の勢いにおそれて誰一人応する者がいませんでした。
その時、カワウソの神が、普段のいばりぐせで、「ふふん!あれぽっきのショキナが恐ろしいのか」といったので、
すかさず神々に、言葉じりをつかまれて、ショキナを討つ役目を仰せつかってしまいました。